皆さんは知ってますか?人様の家のチャイムを鳴らして逃げること。とりあえず鳴らし逃げです。 ピンポンしてダッシュ。世に言うピンポンダッシュです。 誰でも一度はしてみたいと思いません?(え、思わないって?そんなことは知りません) とりあえず私は、してはいけないことをしてしまったようです。 「あの すみません、お手を離していただけないでしょーか」 「君名前は?」 「あ、です」 一瞬偽名を名乗ってやろうと考えたが、それはすぐに却下された。見つめられた瞳が幻想的で この人には逆らえない、 むしろ逆らうなと心が言っている。 「まさか、逃げられるとでも思ってる?」 「いいえ滅相もございません。」 にっこりと私には悪魔にしか見えない笑みを浮かべて、彼はとりあえずどうぞと私を家の中へ連れこ・・(ゴホンゴホン) 案内してくださいました。 「あ、の・・」 「何?」 「いえ何でも」 「そう。」 用がないなら呼ぶなと彼の目がそう言っている気がしてならない。それほど怖いのだ。 そして案内された先は、応接室らしきところ。部屋の隅でおどおどしていたら、それじゃあ不審者だよとか 怪しいから座ってとか、ほかにも色々失礼なことをいわれた気がしないでもない。顔に似合わずなんて失礼な人だと そう思ったが口には出さないでおくのが身のためだろう。命がいくつあっても足りない。 気まずい雰囲気の中、何気に出されたお茶をすすっていると、なんでピンポンダッシュしたのかなんて理由を聞かれた。その質問に 「近頃の女の子は好奇心旺盛なんです」 そう答えると彼は少し眉をひそめて興味なさそうに相槌だけうってきた。(どうでも良いなら聞くなよ) そして怒ってますかと尋ねると、そうでもないよと返事が返ってくる。嘘だ、怒ってない人が家に連れ込んだりしますか。 「誤ったら許してくれます?」 「どうだろうね」 あ、やっぱり怒ってるんじゃないですか。 そしてたとえ私がひたすら謝ったとしても許す気はないのだから困りものだ。いっそこのまま逃げてやろうか。 彼を見ると、読心術でもつかったかのように「まさか逃げれるとでも思ってる?」と微笑まれた。わかってたけど。 「じゃあどうしたら許してくれるんですか」 「そうだね、手始めにキスでもしてもらおうかな」 手始めに?そんな言葉が聞こえたのは気のせいですね。 「ていうかなんで私が初対面の貴方にそんなことしなきゃいけないんですか」 私がそう言うと、じゃあ何では会った事もない俺の家のチャイムを鳴らしたのかな?と嫌なことを言い返した。なんていい性格。 「早くしないともっと酷い目にあわせるけど、いいの」 「・・・(ていうかこれより酷い仕打ちされたら生きていけない)」 思考がぐるぐる巡る中、私と彼の距離もだんだん縮んでゆく。 押し逃げしたの私一人じゃないのに・・・!なんで自分だけこんな目にあうんだ、と思ってももう遅し。 あと数センチの距離でうだうだしていると、むこうから距離を縮めてきた。 この人は心の準備すらさせてくれないのですか。 乙女心総無視ですか。 「またおいで」 家を出るときに後ろから聞こえた声。 唇に残る感触がまだ忘れられないなんて言ったら、笑われるだろうか。 見知らぬ君と |