呼ばれて顔を上げたら、なんだかやけに彼のきれいな顔が近くにあるような気がして だけどそれだけだ でも気がついたら唇が触れていて、死ぬほど驚いたのは言うまでもなく、今に至る

「ちょ、むくろさ」

一瞬と言うには長すぎる間、私はあまりにも唐突で予想外なその行為に目を見開く 息苦しくて見開いた目を細めると、彼は、先程とは打って変わったまるで別人のような心底残酷で楽しげな顔をしていた(つくづくサドな性格だと思う) おまけに離れ際唇の端を咬まれ、口の端にうっすらと血が滲んだ

「った・・!何するんですか!」
「何って、愛を確かめ合っただけでしょう」
「正気ですか?」
「僕がいつ正気じゃないなどと言いましたか?」
「今の行動のどこを取ればそんな平然と正気だなんていえるんですか」
「全く貴方はおかしな人だ」
「おかしいのは骸さんの方だと100人中100人が思っていると思います」
「まあそういうところも好きですけどね」
「いつものことですが話がかみ合ってませんよ」
「そうですね」
「わかってるなら話合わせてください」
「それは出来ません」

なぜならば僕はを甚振るのが生きがいだからです なぜですかと聞き返す前にそう言った骸さんを殴り倒したい衝動に駆られたが、それは彼を悦ばせる事の一つでしかないので止めておく かわりに凄く嫌そうな表情で骸さんへの嫌悪感を表してみたが、予想どうりそれも彼には効かないようだった

「あ、UFOが空を飛んでますよ
「何言ってんですかそんな子供騙し通用しませんよ」

馬鹿な事いってる暇があったらもう少し常識を覚えてください そう言いつつも、やけににこにこ(にやにや?)している骸さんが気になってそっと視線を上へ上げてみると、やはり何も無かった あるとすれば空に浮かぶ飛行機雲と小鳥達だ そしたら隣で彼が笑ったのが雰囲気でわかって、少しカチンときた私は批判の声をあげようとする が、それも未遂のうちに終わった それもこれも全部彼によって

「何ですか何度も何度も!」
があまりにも可愛いものですから」
「ちょっと黙ってください」
「貴方が口を塞いでくれるなら黙りますよ」

今度はふれるだけで離れたそれを抑えながら声をあげると、彼はまたおかしな表情で、私の返事を待つこともせず口を塞いだ

「ちょ、っと!ここ道路です 人前です 公共の場ですよ」
「でも誰も見ていませんよ」
「見てるじゃないですか、」

何ですか、どうしたんですか骸さん発情期ですか? 冗談交じりでそう問えば、彼はそうかもしれませんと凝りもせず距離を縮めてくる その時間をゆっくり眺めていれば、骸さんは妙に低音で 今日はいつにも増して美味しそうだったものですから と私の唇に視線を落としやけに色っぽく微笑んだ(あ、でも嫌じゃない)