「・・・・・

ぐらぐらと視界が揺れる。周りの建物も、人も、ここにある全てのものが、ひた すら揺れて、歪んでいって、もう原型すらわからない。 あれ、私どうなっちゃうのかなぁとか、ぼやけた思考回路で考えてみるけど、答 えなんてのも見つかるはず無くて。でも確かに私はそこに存在していた。

、」
「・・・うるさいなあもう」

でも、目を開けて最初に映ったのは、
白銀のテンパと死んだ魚のような目だった。(あれ、なんで)

「オイコラ
「は、・・・ええ?」

死んだ魚のような目をした(明らかにやる気の無さそうな、でもこれでも教師だという)その人は、確かにうちのクラスの担任でもある坂田銀 八先生で、その先生の「俺の授業で爆睡とは良い度胸だなぁオイィィイ」とかい う言葉で私は今やっとじぶんの置かれてる状況を理解した。

「・・えへへ」
「そんな可愛く笑っても無駄ァー!!」

お前放課後居残り組な〜
先生はそれだけを捨て台詞に、平然と授業へ戻って行く。(先生のあほー!テンパ ー!)
一瞬先生が凄い形相で振り向いた気がしたのは多分気のせいだろうな。
休み時間、授業中の昼寝のことを神楽ちゃんに話したら、「、犯されるから 行っちゃダメアルヨ!」とか「きっとどさくさにまぎれて職権乱用のSMプレイとか する気ヨ!」などと言い出して(しかも大声で)、最後の締めくくりには、「が 銀ちゃんにSMプレイで犯されたアル」とか有りもしないことを過去形に置き換え て教室でみんなに言いふらすものだから、ますます教室に居ずらくなってしまっ た。(勘弁して下さい)

「じゃぁまた明日!」
「うん、ばいばい」
、銀ちゃんには十分気を付けるヨロシ」
「・・わ、わかった」

ありがとう、ってちょっと引きつったかもしれない笑みを見せれば、神楽ちゃんもちょっと嬉しそうに笑う。(いつも何かしら楽しそうだけど)

「また明日事の真相を聞かせるアルヨ!」って神楽ちゃんは嵐のように去って行っ た。 そしてれと入れ替わりに先生が入ってくる。神楽ちゃんと先生の交わしたであろう言 葉が、廊下に小さくこだましていた。
何を言っているかまでは聞き取れないが、先程の彼女の様子からして、自分のことを心配してくれている(楽しんでる?)のだろうとなんとなくわかったので、そんな神楽ちゃんと先生の言いあいを想像すれば自然と笑顔になる。

そしてそんな私を見た先生がまた不思議そうに首をかしげた。(ちょっとかわいいとか思ってないよちっとも)

「何にやけてんだ?
「にやけてません・・!」

またいやらしい想像でもしちゃってんのかと問いただす先生に、冗談は顔だけにしてくださいって言ったら、(いくら先生でも)ちょっとショックを受けたみたい。言い過ぎたかななんて思ったけど誤るほどでもない気がしたので嘘ですよと慰め(?)てあげた。
これで先生だって言うんだから、この世の中一体どうなっちゃってるんだと心配になる。

「先生、早く帰りたいので即決にお願いしますね」
「居眠りしてた奴がいい度胸だなぁオイ。」

「これくらいの性格でなければこの世の中生き残れませんので」
そう(適当に)言ってみたら、「今の世の中クセの強いもん勝ちよォー」とかわけのわかんないことを言い出したので今度は先生の頭を心配した。
(本人に行ったら殺されるな)

「ところでさん、先生とちゅーしてみる気はないかね?」
「・・・・新手のセクハラですか?」
「・・・・・」

「いやコレ真面目な話!今年で卒業だろ?」

そしたら俺と同じ屋根の下で暮らしませんかァアアア!っていうお誘い。悪いこと無いだろ?
ちょっと自慢げに(何を根拠に)言う先生。でももう少し簡潔にしてほしい。(ていうか最初からそれだけ言ってくれれば良かったのに)
でも性格のひねくれた私は、そんな言葉じゃ納得がいかなくて、もう少し何か言って欲しいななんて意地悪してみた。

「意味が分かりませんけど・・」
「・・・まあ、つまりアレだな。」
「・・・・」

先生は少し視線をさまよわせて、ちょっと言葉を詰まらせる。でも、それでも私は気が付かないふりを続けた。
そんな中頭では、いったいどんなプロポーズをしてくれるんだろうとか、ちょっと照れてるところが可愛いとかいろいろ考える。
でも、
彼の口から出た言葉は想像以上にシンプルで、何故だかちょっと涙目になった。


「結婚するか。」







ゆらり、歪む









「ていうか居眠りのお説教じゃなかったんですか?」
「・・しょうがねぇだろ呼び出す方法他に思いつかなかったんだからよォオ!」
「・・・(単細胞)」