「あ、あの、骸くん駄目よこんなところで・・・!」
「クフフ、夜の教室というのもなかなかスリルがあっていいですね」


放課後、皆が下校し誰も居なくなった教室に、妖しげな声が響く。
「それに、抵抗するのを無理やりだなんて更に燃えるでしょう」そんな事を口にしながら、その眼はしっかりとを捉えており、ゆっくりと彼女を後ろの机へと押し付ければ全てが骸の思うがままだった。
二人を照らすのは窓から差す光の微々たるもので、外では沈みかけの太陽がオレンジ色に輝いている。そしてその夕焼けに後押しされるよう口付け、その口付けも触れるだけのものから徐々に深いものへとかわっていった。

「んう、っ」

長い間離れることの無い唇に、声が漏れる。
それは時たま、いやらしく音を立て離れてはまた元の位置に戻る。その行為を繰り返しているうちに、は背にあった机の上に乗り上げる格好になり、無論上には骸がいいように覆いかぶさっていた。

「む、くろっ・・!」










「という夢を見たんですよ」
「あんた頭おかしいんじゃないの?」彼女が軽蔑するように眼を細めれば、骸はそれさえ嬉しく思うかのように微笑んだ。(しかもそれをわざわざ私に言いに来る必要はないし)

「僕としては夢の続きが気になってしょうがないんですけどね、」

、やってみませんか、彼がそう口にしようとした(であろう)ところで、は骸に平手打ちを食らわせていた。


「今日はまたずいぶん情熱的な愛の鞭ですねぇ。」
叩かれた右頬に手を当てる彼だが、その行動がまた喜んでいるように見える(それはわたしの目がおかしいのか、はたまた彼の頭がおかしいからなのか)(たぶん後方であろう)

「あんた絶対マゾでしょ」
「僕は普段Sですが、貴方の前ならMも悪くないと思いますよ」
「(シカト)」

「ほら、無視だなんてもサドですね」まあ貴方はSでしょうが、僕のためにMに目覚めてください。そう言った骸の顔を嫌そうに見上げれば、上目遣いで睨まれるのもまたそそられ(以下略)などと口走るので彼女はもう彼の顔すら視界に入れなくなった。
そうすれば視線は自然は外へ向けられ、沈み途中の太陽と下校途中の生徒がほんの数人目に入る。その光景をじっと見ていただが、先程の長い骸の夢話をはっと思い出して青ざめた。


「おや、どうしましたか?」顔色が良くありませんよとこちらに近づく気配がして体をこわばらせる。
「なんでもない」と口にしても彼は聞き入れず、心なしか先程より距離が近づいているような気がしてならない。

「ちょ、近づかないでよ」

「それは出来ないお願いですねぇ」

クフフと(誰が聞いてもおかしいと思うであろう)彼の笑い声が夕日で更に深みを増し寒気がした。


「この雰囲気、僕の夢と酷似しすぎていると思いませんか?」
「いいえ、全く」

「そうですか、つれないですね」と急に視界が暗くなったと思えば前に彼が立っていて、今一度現在の状況の危うさを知る。
「近づかないでって言ったでしょ」そう冷たく吐き捨て骸に目を向ければ、彼は「やっと眼を見てくれました」と微笑んだ。左右色の異なる瞳がを写す。じりじりと詰め寄られて、背中に何かひやりとしたものが触れたと思い目を向ければ机が並べてあり、それはまさに骸の夢そのままに事が進んでいるのではないかと嫌でも思わせられた。

「ちょっと、」とやけに近距離の彼を手で押し返せばそれをとられ逆に押し返される。
急に近づけられた綺麗な顔(いくら頭はおかしくても)に目を見開けば、唇と口内を侵食するぬめりとした感覚(ちょ、こいついきなり舌入れやがった!)にこれはまだ夢の中だと言い聞かせていた。





「どうやらこれは正夢のようですね」










(070730)
使者の見る夢
骸さん書くとどうしてもSMねたになるのは何故(骸マジック!)