、14歳、並森中2年3組、性別女。
入学当時から今まで、特に目立った行動は無くいたって真面目。しかしそれをも翻す大きな難点として、無駄に明るく他人の迷惑など考えない資格の持ち主である。
雲雀はどこからか持ってこさせた個人データに目を通し、紙と本人とを見比べるようにして風紀委員に入りたいとやって来た少女に目を向けた。
「それで君、何で風紀委員に入りたいわけ?」
「雲雀さんと夢のスクールライフを共にしたいからです」
「・・・草壁、こいつ捨ててきて」
「なんでですか!私はただ真実を口にしたまでです!」
「草壁」
「いや、しかし委員長・・・」
「僕に逆らうの?」
彼が鋭くそう言えば、今時珍しい髪形をした、草壁と呼ばれた青年を半ば強制的に頷かせる。
だが、彼だけの力では、到底はびくとも動こうとはしない。仕方なく応援を呼ぶも、それさえ彼女には通用しない。それには雲雀も、この見た目は至って普通の外見をした少女のどこにこんな力が秘められているのかと、草壁に今にも噛み付きそうなを面白そうに眺めていた。
「こら!委員長が出て行けとおっしゃってるんだ、抵抗するんじゃない!」
「いーやー!散れこの熱血系!わたしに近づくな、うつる!」
「・・・・(うつる)」
「草壁、暇つぶしにちょうどいいおもちゃを見つけた」
「は?それはどういう意味で」
彼女の言葉に少なからずショックを受けていた草壁が意味がわからないというふうにいつもの委員長の気まぐれに考えを巡らせていれば、雲雀は「勝手にさせときなよ」とどうやら彼女を風紀委員の一員として迎え入れる許可を出したようだ。一瞬の間の後それに気が付いた草壁は、短く返事をして委員の仕事の説明に取り掛かる。
はというと、仕事の説明などには一切興味を示さず、それどころか話すら聞いていないかのようにまたどこかへ狩に出かけてくると出て行った我らが委員長雲雀恭弥の後姿を見えなくなるまで眺めていた。
そんな彼女を見て、草壁はまた先が思い知らされるとため息を漏らすのだ。
* * * *
「あー、懐かしき思い出ですね!」
ね、草壁さん、と同意を求める彼女を尻目に雲雀を見れば、彼は今の昔話など何も聞いていなかったかのように、デスクに腰掛けていた。
その様子に草壁も、委員長の機嫌を損ねてはいないようで良かったと一まずは安心する。だがその休息は長くは続かない。
そう、今ちょうどこの場で委員同士の内乱が起きようとしているのだ。草壁は巻き込まれぬうちにと何かしら理由をつけてその場から姿を消していた。だが、当たり前だがそれを大して気に留めるような人はここには存在しない。
「雲雀さん」
「なに」
「聞いてましたか今の話?」
「昔話なんかに興味は無いよ」
「そうですか、」
せっかくわたしと雲雀さんとの素敵な出会いを何章かに分けて皆さんに伝えようというすばらしい計画を1夜にして考えたのに!
はそう言うが、実際そんなことされたら迷惑だと彼は本気で嫌そうな顔をした。だけど脳内を勝手な妄想に支配されている彼女はそれにさえも気づいていない。
1年一緒に居ようが居まいが関係ない彼女の態度にいい加減嫌気が差した雲雀は、学ランの下からトンファーをちらつかせた。
「殺されたいの?」
「い、いいえ!」
「じゃあもう黙ってて」
そう意気込んで言えば、彼女は一瞬傷ついた表情で目を逸らしたが、あとは小さくはいとだけ返事をして座っていたソファーに更に身を沈める。
雲雀もそれを特に気にすることも無くまた風紀委員の仕事に戻り、部屋には紙の擦れる音と、彼がたまに走らせるペンの音だけが静かに響いた。
「(デスクワークしてる雲雀さんも素敵・・・)」
「さん」
それから何十分と時間は過ぎているのだろうけど、飽きもせず凝りもせずいつもながら紙とにらめっこしている彼から目を逸らせずにいたは、いきなり自分へと向けられた視線に思わずどきりとする。
なんですかと緊張からか途切れ途切れに綴られた言葉を彼に返せば、やっぱり静かなさんは見てて気分が悪くなるなどと勝手なことを言い出した。
「じゃあ喋って良いですか?」
「勝手にしなよ」
ただ、君がそういう顔してると仕事がはかどらなくて迷惑だ。
どうやら気になって仕事に手が付かないと言いたいらしい雲雀は、ひねくれすぎた言葉でそれをへと伝える。
もそれは1年の月日で理解しているようで、嬉しそうに目を細めるとまた確認するように彼の名を口にした。
「雲雀さん」
「・・なに」
「わたしのこと好きですか?」
「嫌いだよ」
(やっぱり黙っててくれる?) (なんでですか!さっき良いって言ったじゃないですか!)
CourageousPeople
070815
勇気ある者達