朝の眩しい光に目を細め、先ほどから聞こえていたこんこんという窓のなる音と
ともにカーテンを引いた。
「なにしてるの、山本。」
まだ寝起きで回らない舌を慣らすように口を開くと、彼は、窓に投げようとして
いただろう石を横に投げ捨てる。
「ごめん、起こしたか?」
「ううん、いいよ。」
それよりいつも言うけど窓に石投げないでよ、傷つくんだからね。そう言うと彼
はいつものはにかんだような笑みを見せた。山本は昔ながらの幼なじみで、いつ
も何かあるたび迷惑なことに時間関係無しで私の部屋の前へやってきて窓をならす。この行動が始まったのは中学に入ってからだが、もはやそれが日常となりつつあった。
「それで、今日は何の用なの?」
「いや、用っていうか、今から試合だからそのまえに顔でも見とこうかなって」
はははとやっぱりはにかんだ笑みをみせる山本は何故だかいつもの彼らしくなく
て、何かあったかと訪ねたが返ってきたのはやっぱりはにかんだような、頼りないようなあるような、よくわからない笑みだった。
こんなときくらい頼りにして欲しいと思うが、きっと私の話しになんて耳もくれずに笑うんだろう、彼は。だから私もそっと気持ちを胸にしまって何事も無かったかのように笑い飛ばすことにしようと決めたのだ。
「今日の試合の相手、強いの?」
「ん、まぁそこそこの強敵だな。」
「でもうちは山本がいてこその野球部だからね、主役がそんな弱気じゃ勝てないよ。」
「そうだなー、でもさ、最初から勝てるって決まってる試合なんてどこにも無いんだぜ?」
だから余計に楽しいんだけどな!
野球の話をしているときの彼の顔は、多分どんなときよりも、眩しいくらいに輝いている。山本はきっと、10年経っても20年経っても今までどうり野球だけはやめてないんじゃないかなと思った。
「ていうか時間大丈夫なの?」
どうせ準備まだなんでしょ?
「あ、やっべ。もうこんな時間か・・。じゃぁ俺行くわ!」
「ハイハイ、いってらっしゃい。」
この間みたいに大怪我して帰ってきたらもう口きかないからね!少し遠くなっら背中にそう言うと、何かを言い忘れていたかのように振り返って彼も口を開いた。
「今日はのために場外ホームラン打ってくるからさ!」
山本の言葉が何度も頭でこだました。
無事に帰ってきたらキスの一つでもお見舞いしてやるか。
ワンストライク
(あなたは早くも私の心を射抜いてしまったみたい)
試合前というよりは戦いの日みたいな