「骸さんって甘党なんですね」 朝から電話でお呼びだしがかかり、眠い目をこすりつつどこに連れ回されるのかと思いきや、行き着いた先は案外普通にお洒落なカフェテリアだった そしてわたしを連れ出した張本人は嬉しそうに何を注文したかというと、甘党にはかなり嬉しい(今だけ半額の)特大パフェ わたしが驚いて目を丸くすれば、彼は「のぶんもありますよ」といつの間に注文していたのか、1つは骸さんの、もう1つはわたしのらしき2つの大きなグラスを片手にやってくる定員さんの方に目配せすると、待ってましたと言わんばかりにスプーンを手にとる そしてわたしはまた、彼の雰囲気慣れした切り替えの早さに驚かされるのだ 「、食べないんですか?」「食べます、食べますよ だからわたしのより先に自分の食べてください」わたしのパフェに伸ばしてきた骸さんの手をはたき落とせば、「痛いじゃないですか」と自分の手をさすり微笑んだ(けどぜんぜん痛そうに見えないのはきっと彼がMだからだろう) そしてわたしも自分のパフェにスプーンをさすと、それを口に運ぶ 「甘いです」「パフェですからね」そんな何でもない話をしながらパフェを食べ進めていると、骸さんは急に何か思い出したように手を止めた それだけならば、日常茶飯事のことなので特にわたしも気には留めないのだが、手を止めた後ずっとこちらを凝視するものだからわたしもいてもたってもいられなくなって手を止めた 食べているところを男性に見られ続けるというのは女として抵抗がないわけがない 「わたしの顔に何かついてますか?」我慢の限界に達してそう聞くと、彼は「目と鼻と口がついてますね」と微笑んだ(ほらこれはわたしの嫌いな顔だ) 「一回死んでみますか?」「貴方に殺されるなら本望ですよ」「相変わらず変態ですね」「そんなところが好きなんでしょう?」「そんなわけないじゃないですか頭おかしいんですか?」「そうですね、貴方のせいです」「は、人のせいにしないでくださいよ、骸さんが頭おかしいのは元からでしょう?」「おや、聞き捨てなりませんね、僕のどこがおかしいって言うんですか?」「全部ですよぜーんーぶ」 少しずつ多きくなる口論に、当たり前のことだが店を追い出された(勿論食べかけのパフェともお別れだ) 「なんてことしてくれるんですか骸さん」わたしがパフェの恨みに燃えているところ、隣で彼は「また食べに来ましょう」と言う 「骸さんがうるさくするからですよ」追い出されたのは 彼の言葉を無視してそう言うと、骸さんは何も言わず微笑んだ(なんなのこのひと) だけどその後開かれた骸さんの口から出たのは、わたしの文句に対しての返事ではなく、また今度の話だった 実は今日骸さんと会ったのだってすごくすごく久しぶりだったし、会わない間電話一つよこさなかった彼との会話は半年振りほどだ この人がいったいどこで何をしているかなんて想像も出来ないけど、危ない橋を渡っているんじゃないかって心配はしてる(わたしがどれだけ骸さんからの連絡を待ってたかなんて、きっと貴方は知らないんだろう)(今日携帯の画面に表示された"骸さん"の文字を見て心臓が跳ね上がったことも) そしてわたしも今まで何してたのとか連絡くらい入れなさいとか言いたいことを全部我慢してここに立っているのだ 半年振りだっていうのに久しぶりの言葉もなくやって来た彼は、また いつのまにかどこかへ消えていくのだろう(そんなのもう何度も経験した わかってる) だけどまたいつ戻ってくるのか、帰ってくるのかもわからない骸さんを待ち続けるわたしは、きっと彼に依存してる 「今度は他の店にしましょうか」「当たり前です もうあの店には行けませんよ」「が言うならしょうがないですね もっといい店を探しておきます」「当たり前ですが 今度もまた骸さんのおごりですからね」 そしてわたしはずっと いつ帰ってくるかもわからない彼を待ち続けるのだろう 「また来ますね」と言う彼の言葉を信じて たぶん、明日もあさっても





叶わない