さいきん、よく目が合う気がする 最初は気のせいかもしれないって思ったけど、やっぱり女の子だもん もしかして、なんて乙女ちっくな淡い期待をもつのは当たり前のこと そしてそれは私も例外じゃない (だっておんなのこですもん)(あたりまえでしょう!) たくさん恋して、おしゃれして 大すきな人のために、女の子は皆可愛くなっていくの!最近そんな女の子たちに仲間入りした私は、毎日お洒落するのだって面倒じゃなくなったし、それのための早起きだってぜんぜん平気(寧ろ楽しいくらいだ) 学校へ行くのなんかもっと楽しみだし、授業中居眠りなんてもってのほか(だって彼からひと時も目を離したくないの)(授業中隣の子と話す時も、居眠りするところも、全部) 視線はずっと、ずっとあの人を追っている 阿部、隆也



「な!なに!」


夢うつつ頭を悩ませてたら、急に声をかけられて、しかもそれが阿部くん当人で驚いた。いや驚いたなんてもんじゃない、心臓が跳ね上がって、あからさまに鼓動が速くなる そしてそれと同時に、顔に異常なほどの熱が集まるのを感じた (ああ私今絶対顔真っ赤だ!) 妙な返事をしてしまった後、どうしていいのかわからず(かといって彼の顔なんか見れるはずもなく)視線を彷徨わせていると、阿部くんも少し気まずそうにもう一度私の名前を口にした 


「あのさ
「う、うん」
って好きなヤツいる?」
「うん、え?」
「いや、別に深い意味は無いんだけど」


花井がさ あ、野球部のキャプテンなんだけど そいつに昨日の話したら、何か変なこと言い出すから気になってきて・・ そう言う阿部くんはやっぱりちょっと気まずそうに視線を彷徨わせる (ちょっとかわいい) 


「変なこと?」


あれ、まさか私が阿部くんのこと好きだてこととかばれちゃったとか? まさかそんなはず無い ずっと見てるけど、それだけで、今更言うのもなんだけどちゃんと話をするのはこれが始めてだ(とおもう) だから結論としてそんなはずは無いと言い切れたのに 阿部くんは意図も簡単に私の期待を裏切ってくれた(ああこれが夢ならいいのに)


が、俺のこと好きなんじゃないかって」


頭の中が真っ白になって、何を言っていいのかわからなくて(その前に何も考えられなくて) 私はその場に立ち尽くしていた (その間も阿部くんはずっと答えを待っている) 何か言わなきゃ、って思ったけど、今の気持ちをうまく言葉に出来ない さいあく、だ 目の奥がつんとなって出そうになった涙を必死でこらえる (ここから逃げ出したい)


?」
「ご、ごめん」
「何で誤んの」


「私、阿部くんの事好き」


何か言いかけた阿部くんの声を遮って、言ってしまった とうとう、 こんなこと言うつもりなかったのに、まだ だけど、もう終わってしまった 私の恋も、楽しかった学校生活も、青春だって全部ぜんぶ 始まりは突然で、終わりはなんともあっけない 恋とはこんなものなのだろうか (だったらなんて切ないことだろう) ごめん、ねって耐え切れず零れ落ちた涙を隠すようにしてその場を後にしようとしたら、後ろからぐっ、て肩を引かれて振り返る暇も無く倒れこんだ (けど、)不思議と痛みは無くて 衝撃に堪えるよう閉じていた目を開けば、先程と何ら変わりない位置にいた (な に) なんだろう、この暖かいものは 考えて、下を向いたら、そこには先程まで見えていた阿部くん(私にはわかる!)の足があった 抱きしめられている (誰に?)(そんなの一人しかいない) 阿部くん、に


「え、あ、の」
「ごめん」
「なんで?」
「俺、が好きなんだ」








ここが終点
(う、うそだ) (嘘じゃないって言ったら?)