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夜中、よい子は夢の中にいる時間 つまり真夜中、携帯の着信音が鳴り(電源きり忘れて)飛び起きたわたしは、真夜中の静けさを打ち消す迷惑な音の正体を手繰り寄せると直ぐに通話ボタンを押した その耳障りな音がやんだことに安堵し慌てて画面に目をやると、そこにはわたしの彼氏いない暦16年を見事に止めて見せた現彼氏雲雀恭弥の名前が表示されている(ていうかこんな時間に電話をよこす非常識な人は一人しかいない)

「もしもし・・」
「僕だけど」
「(わかってます)」
「今外出れる?」
「え、いま?」
「そう」

外見て って言われたとおりカーテンを開けてみたら、もう学校が終わってずいぶん経つのに(しかも真夜中なのに)まだ規則破りの学ランを着て、電話の相手はそこに立っていた 真っ黒なひばりさんは、真っ黒な闇に溶け込んでしまいそうだ 何も言わないでじっと突っ立っているわたしに、無理ならいい って彼はそう言うけど、ここまで言わせといてそうもいかない だから、でれます・・・!って言ったら、じゃあ早くしなよって逆に怒られた(ほんと短気だな)

「ひばりさん!」
「うるさいよ」
「だって、こんな時間にどうかしたんですか?」
「どうもしない」
「え、じゃあなんで?」
「ただ通りかかっただけ」
「・・・」

絶対嘘だ・・・!って思ったとたん急に雲雀さんの手が伸びてきて、一瞬思ってることを見透かされて殴られるのかと思う けど違ったみたいで、その手はわたしの頭の上にふわりと乗って優しく頭を撫でられた (どうしよう雲雀さん頭のネジでも落としてきたのかしら) あの、って控えめに声を出すと、なにって頭の上から声が降ってくる それで、思っていたよりもずっと雲雀さんが近くにいることに気付いた 驚いて声をあげようとすると、気付いたら背中に手を回されて、あっという間に抱きしめられる それに更に驚いたわたしは、何も出来ずに熱くなる顔と大きく波打つ心臓の音が彼にばれなければいいとずっと思っていた

まあや」
「な、なんですか?」
「何でこんな服で出てくるの」
「いや、それは雲雀さんが」
「僕がなに?」

何だか肌寒いと思ったら、上着すら羽織ってくるのを忘れていた どこからどう見ても寝間着だとわかる格好のまま、私は彼氏の前に立っている この言い方は凄く嫌だけれど事実であるからしてしょうがない そんなわたしの格好を見て、雲雀さんは眉をしかめた(あ、怒ってる) 彼の腕がわたしからそっと離れていく その暖かさを少し名残惜しく思いながら見送ると、その人と視線が絡んだ その瞳にどきりとして、とっさに言葉を紡ぐ

「ちょっと上着とって来てもいいですか?」
「もう帰るから」
「え、でも」
「早く入らないと風邪引くよ」
「・・・はい」
「じゃあね」

もう一度彼の手が私の頭に触れた ちょっとだけ雲雀さんの表情がやさしく見える(たぶん気のせいだ) そして今度は抱きしめられる代わりに、唇に暖かくてやわらかい感覚 まだなれない感じに、わたしはぎゅっと目を瞑った 少しだけ触れたと思ったら、直ぐに離れていく 少しして目を開ければ、雲雀さんはいつもどうり何食わぬ顔でそこに立っていた

「あの、雲雀さん!」
「近所迷惑なんだけど」
「す、すいません」
「なに?」
「雲雀さん、結局何しに来たんですか?」

あ、無視された 何も聞こえなかったように行こうとする雲雀さんを見てそう思ったけど、後姿をずっと見ていたら思い出したように雲雀さんが振り返る

「大した用じゃないよ」




(ただ、君の顔が見たくなっただけ)





天候は、
気 ま ぐ れ