私の幼馴染はドジでバカでどうしようもなくて、学校ではダメツナなんて呼ばれてる。私の嘘にも簡単に騙されるし、冗談は通じないし、京子ちゃんが好きだし、無駄にいつも周りを気にかける心配性だし。おまけにドジなだけじゃなくて、運も無いとくる。そんな誰がどう見ても可哀相な子でしかなかったツナが、最近は何だか違う。ドジでバカでダメダメで学校じゃ常にいじめられていた幼馴染の沢田綱吉は、私の知らないうちにいつの間にか、どこが変わったのかと聞かれると良くわからないけど何となく大人でちょっとかっこいいとさえ思う沢田綱吉になっていた。私の知らないところで、勝手に。それがどうしても許せなかった私は、ツナなんかよりずっと子供なんだと思う。 「ツナ変わった」 「は?何だよ急に」 「そんなの私が聞きたい」 「・・まあ色々あったからなー」 「なに色々って」 「そ、それはまあ」 気まずくなったとき、直ぐ目を逸らす。ツナの癖とかちょっとした仕草とか、朝起きたら一番に何をするかとかそういうどうでもいいことまで全部知ってる。知ってた。幼馴染だからだってそう言う優越感に浸って一人満足してた。だけどいまのツナは知らないことばかりで、それをどうしても私に秘密にしたいらしい。最近目を見て話さなくなったし、聞いても直ぐ誤魔化すか逃げるかばればれの嘘つくかどれかだ。そりゃあ少しはこのダメなところがどうにかなればいいとか、かっこよくならないかなとか考えなかったわけではないけど、こんな風に私の知らないところで違う人になっていくツナを見ると、ちょっと悲しくなった。昔からいる幼馴染の沢田綱吉は、もうここにはいない。 「、どうしたんだよ…」 「どうもしてない」 「俺なんかした?」 「自分で考えろ馬鹿」 「ば、馬鹿ってお前なあ!」 「ツナにはわからない!」 私がどんな気持ちでいつの間にか出て行って帰ってこないツナの帰りを待っているのかとか、毎日どれだけ期待しながら沢田家のドアをノックするのかとか、そのせいで毎晩なかなか眠れない事だって、絶対ツナにはわからない。わかってたまるか。小学校の時、いじめられてるツナを助けるのは幼馴染だった私の役目だったし、こけて泣きながら帰ってきたのを慰めるのだって私だった。だけど今ではいじめられるどころか友達まで出来て、(しかもその友達は学校一の人気者山本武だし)(片思いの相手の京子ちゃんとまで仲良くなっちゃって)私の役目なんて今では何一つ残ってやしない。幼馴染なのに。実際、ツナを助けるのも慰めるのも遊んであげるのも、私の自己満足とかのためであってツナのためではなかったのかもしれない。 「お前ほんとにどうしたんだよ?」 「おかしいぞ」ってツナが心配そうにおでこにしわを寄せた。こういうところは昔から変わってない。それが悲しくて「なんでもない」って私が素っ気無くしても、ツナはずっと隣でじっと座って動かなかった。そっとして欲し時に限って優しくしたり話しかけたり、空気が読めないのだろうかこの男は。だけど、私がいないと何も出来ないと思っていた幼馴染は、もう十分なくらい大人になっていた。(たとえば、優しげなその瞳 とか) (大きくなった背中とか) (ちょっと男らしくなった雰囲気とか) (でも、京子ちゃんを好きなとこは全く変わってない) 「ツナは、私に言えないことがある?」 「何言ってんだよ、あるわけないだろ」 「山本とか、獄寺とか、京子ちゃんには言えるのに?」 「そ、そんなこと」 「そんなことない?」 そんなの嘘だ、って言ったらツナは困った顔をした。泣きそうだ。泣けばいい。そしたら私が慰めてあげるのに、昔みたいに。幼馴染なんだから。 「つっくん、京子ちゃん来てるわよ〜」って下からお母さんがツナを呼んだ。どうやら私もかなりタイミングの悪い女らしい。幼馴染同士間が悪いところはそっくりだと思う。それでこの時ばかりはお母さんや京子ちゃんでさえも憎く感じた。最悪な女。ツナに見放されて当然だ。そりゃあ京子ちゃんのほうが可愛いし女の子らしいけど、私だって負けてないところの一つや二つあるかもしれないのに、って未だこのむずむずする感覚を諦められずにいる。 「ごめん、俺」 「謝らないでよ、馬鹿ツナ」 私たち幼馴染の距離は、すごくとおい パステルピンクの 恋心 (幼馴染なんかに生まれたくなかった) |