一瞬で恋に落ちて、その想いはまた一瞬で粉々に打ち砕かれた。今日わかったことは、どうやら神様はよほど私が嫌いらしいということだ。涙が出ないほど悲しい事なんて無いと思っていたし、これからも無いだろうと思っていたけど、現実はそんな私の考えを呆気なく覆すのだ。

恋に落ちるのは簡単。ダメツナなんて呼ばれる一面とは別に見せた彼の表情にどきりとしている自分がいて、この歯がゆい気持ちが恋だというのに時間はかからなかった。ただ一つ欠点を述べるとすれば、私の場合はそれが遅すぎて、ツナにはもうずっと好きな女の子がいたということだろう。しかもその相手が学年で一番可愛い京子ちゃんだって言うものだから、それはもう完敗だと思う他無かったのだ。女の子らしいという言葉がしっくり来る彼女は同性の私から見ても誰が見ても魅力的で、自分と比べる事すら考えられない。結果、私はこの恋に蓋をすることにした。のに

「お前、十代目のこと好きだろ」
「何言ってんのそんなわけない」
「嘘つくなよ」
「嘘じゃない」
「お前なあ、」
「だったらなに!」

別にツナと京子ちゃんを邪魔したりしないし、獄寺にだって迷惑かけてるわけじゃない。自分なりに諦めようとだってしてるし、全部無かったことにしようと努力もした。けど、だめだったものはしょうがないしどうしようもない。これでもやめろって言うなら、神様はとても酷なことを言う。別に私がなにか悪いことをしたわけでもなく、迷惑をかけたわけでもないのに。ただ勝手に好きになっただけなのに。

「おい」
「獄寺には関係ない」
「そんな怒るなって」
「もううるさい」
「悪かった」
「そう思うなら放っておいて」
「俺さ」
「もういいから!」

「お前のこと好きなんだ」



「は?」
何言ってんの何かの嫌がらせ?やめてよ迷惑。
そうやって言ったら本気だって獄寺がいつものように怒った顔をした。というか獄寺は常におでこにしわを寄せているため常に機嫌が悪いように見える。もしかしたら本当に機嫌が悪いのかも知れないが今はそんなことどうでも良かった。

「そんなの、ふつう今言う!?」
「今言わなくていつ言うんだよ」
「でもだって、」
「なんだよ」
「こんなのおかしい」
「なにが」
「獄寺がわたしのことすきとか」

おかしい。

目の前にいるのは、いつもどうりのツナと友達で山本と仲が悪いただの獄寺隼人なのに。わたしが好きなのは、ダメダメででもいざという時は頼りになったりする沢田綱吉なのに。
窓からツナと京子ちゃんが並んで帰るところが見えたけど、なんだかもう良いような気がしていた。認めたく無かったのに、今ならお似合いだって思えた。

へんだ。
ほんのちょっとでも獄寺を好きになったのかもしれないと思ってる自分とか、頭の中がツナより獄寺のことでいっぱいなこととか、全部。

「おい」
「ちょっとまってよ」
「はあ?何が」
「わたし 好きみたい」
「わかってる、十代目だろ」
「違う」
「何がだよ」


「獄寺がすきなの」

敗北に笑う