地球って、あと数十年もしないうちになくなるらしいよ。 そう言ったら、お前今度は何の映画見たんだよって怪訝な顔をされた。失礼な話だ。わたしだって別にいつもテレビに影響されているわけではない。 ただ、偶然、今回見たのがそう遠くない未来を描いた(もちろん想像に過ぎない)映画だったというだけだ。 誰であれそんなもの見たら、数十年後には本当に隕石が落ちてくる(もしくは自我を持ったロボットが地球を侵略する)かもしれないと少しばかりは考えるだろう。 私はそれが他人より多かっただけの話。何より想像力が豊かなのは良いことだし、何事もまずは想像してみることが大切だ。 とか言い訳が尽きたところで彼の顔を見れば、もう興味はわたしなどではなく静かに流れていたニュース番組へと移されている。(この冷血男) なんだか最近阿部が私に対して冷たい気がしてならない。いや本当に気のせいかもしれないけど、そうだとも限らない。そのように、 わたしと彼の恋人という肩書きも、実のところ何の意味もない。誰も彼を独占できやしないし、誰にもそんな権利与えられてはいない。 そしてそう言うわたしだってその中の一人。結局のところ、肩書きを持つ以前と何もかわりやしないのだ。 とか、意味もなくネガティブになってみた。(実にどうでもいい) 「おまえ今なに考えてた?」 「いろいろあんのよ」 「何だよ色々って…」 「例えば、」 阿部はなんでいつまでたっても苗字よびなのか、とかね 「に言われたくねーな」 「あたしはいいの」 「はあ? なんでだよ」 「だって阿部じゃない阿部なんて阿部とはいえないもの」 「…何言ってんのか全然わかんねーし」 「わからなくて結構」 ていうか阿部の名前って何だっけ? 冗談のつもりで言ったのに思いっきり睨まれる。嘘なのにな。 つか前から気になってんだけど、 阿部が言った。 「何が?」 「なんで泉は名前呼びなんだよ」 「こーすけは幼馴染だから」 「彼氏より幼馴染優先するか普通?」 「そんなのわたしの勝手でしょ」 「…そんなにあいつが好きかよ」 「何言ってんの?」 あたしは阿部が好きだっていつも言ってるのに(ていうか言葉にしてくれなくて不安になのはこっちだ) 「阿部のわからずや」 「、おまえなあ…」 「ばかで頑固でたれ目」 ほかにもいろいろ言ってやった。阿部のそういう諦めたような目が嫌いだし、泉と付き合えばいいだろとか言う阿部なんかもっと嫌い。 イライラしてると人の話を聞き入れないところも、すぐ怒るところも八つ当たりするところも全然恋人らしいことだってしてくれないことも記念日とかまったく覚えてないところも いつも電話するのは私からで、向こうから全然連絡くれないところもそういう不安を理解してくれないところも。 挙げだしたらキリがないくらいこんなに嫌なところがあるのに、なんで阿部なんかと付き合ったりしたんだろう。 「阿部といると疲れる」 「そうだな」 「付き合ってるのに手だって繋いだことない」 「…だって繋ぎたいとか言わなかっただろ」 「言えるわけないじゃん」 「言わなきゃわかんねーよ」 「私だってわかんない」 阿部がほんとに私のこと好きなのか、わかんない。 そう言ったら、阿部が私の目を見た。こんな時になんだけど、あーやっぱたれ目だななんて思う。(でも好きだよたれ目)だからついでに、阿部の好きなところも挙げてみた。好きなとこって、いざ考えてみるとすぐには思い浮かばないものなんだなと思う。(それが全部が好きってことなのかな) 素直じゃないところ。でもそこがかわいい。誰よりも周囲のことを気にかけてくれてるところ。意外と涙もろいとか、たまに優しいところ。結構嫉妬深かったり(例えばさっきのこーすけの話とか)、何よりも野球が好きなところ。(野球のない阿部なんて考えられない)他にもいろいろありすぎた。 「なんだよ急に」 「だって言われたことない」 「言っただろ最初に」 「一回だけだし、曖昧だし」 「何が言いたいんだよ」 「ほら怒った」 「怒ってねーだろ」 「だから!私意外と阿部のこと好きみたい」 そう言ったら、ごめん俺が悪かったって阿部が目をそらした。 |