ザーザーザーザー真っ黒な空から、透明な液体が落ちてくる 言っちゃえば、雨が降っている 少し降る雨とかじゃなくて、結構な量が降っていて周りにある物を全部びしょ濡れにしている コンクリートに水溜りを作って、その水溜まりにまた落ちてきて それでさえ迷惑なのにその上を大きめの車が通過して、ビシャァと音をたてて歩いている人にかかったりしている そんな迷惑極まりない雨の中を、かさを差さないでびしょ濡れになりながら歩いている 別に風邪をひきたいとか、かさを忘れたとかじゃない 飲み物と適当なお菓子をコンビニで買おうと家を出て10分コンビニに到着すると、外に置いてあったかさ置き場に自分のかさを突っ込みコンビニに潜入 買いたい物を買って外に出てかさ置き場で、自分のかさを探すと 無い自分のかさが無い ビニールがさが2本と黒いかさが一本悲しく置いてある 今私が出てきたコンビニの中にいる人の数は3人 当たり前の如くかさの数と人の数がぴったりだ そうそしてコンビニで買い物を終えた私のかさはなぜか無い コンビニでの安っぽい買い物の間にかさが消えてしまったわけだ 何てついてないんだ こんなにあれだバケツをひっくり返した様な雨の日に、何でかさを盗まれないといけないんだ ちなみに私は生まれて今この瞬間まで、かさを盗まれるという経験をした事が無い せめて人生の初体験をするなら、学校でした方が良かったのに 盗みもしてないし薬もやってないしカンニングでさえもした事無い私に、こんな嫌がらせをしなくても良いじゃないか神様! 「どうしよう」 呟いた声は、ザーザーと元気の良い雨の音にかき消される コンビニの前に立ち尽くす女の子ってどうだよ!あんまり良い光景じゃないと思う 雨のせいもあるしかさ盗まれたせいもあって、今凄い悲しい気分だ このまま雨に濡れながら、家に帰るのかと思うと気がどっかに飛んでいきそうだ 何て言ったって私はもうお風呂に入った後だ びしょ濡れで帰ったらもう一回入らないといけないじゃないか!めんどくさいにも程があるぞ 憎むべきはかさ泥棒と雨だその雨の方を意味無くにらむと、道路の反対側にある曲がり角に見慣れた水玉が消えていった 数秒の間曲がり角を見つめてから、きっと今のはかさ泥棒に違いないと思い お世話になったコンビニの屋根から雨の中に飛び出した ビシビシと雨は私に体当たりしてきて、その度に服にシミが出来ていく 洗い立ての髪の毛だって汚い雨に濡れて、もう一回洗う事は確定した 道路を渡って曲がり角を曲がると、前方に私のかさが見えた かさ差してるからどんな人かは分からないけど、多分男だしかもやたら足の長い もしかして外人さんなのかもしれない外国ではかさレンタルサービスがあって、それと勘違いして私のかさ差してるのかもしれないと思ったけど、多分そんなサービス無いと思うし とにかく取り返さなきゃと、かさ泥棒に声をかけた 「あの!すいません」 「うん?何」 「それ私のかさ何ですけど」 「ふぅん じゃぁ借りる」 何て自己中な人なんだ!それにかなりの生意気君だ! しかも自己中だけじゃ足りないのか、かさ泥棒は金髪のショートヘアーで頭にティアラなんて乗せてやがった 長い前髪のせいでかさ泥棒の目は見えないけど、鼻と口は普通に見えている 外見では外国人だけど絶対にかさレンタルサービスと間違えたわけでは無さそうだ 借りるって言ったしね!しかもそれがさも同然かの様に言いやがりました 「あのですね 私が濡れるんで返してください」 「だってオレ王子だもん」 「はぁ?」 完全に頭のおかしい人にかさを盗まれたみたいです 自分の事王子って言いましたよこの人どうしよう いや確かにですよ、金髪だしティアラしてるし外見王子でも中身が凄いわがままじゃないですか!普通の王子様ってもっと優しくて白馬に乗ってるもんじゃないんですかね?人のかさ盗む王子なんて聞いた事無いですよ 「何お前王子の言う事聞けないの?」 「いやいや人の物を盗んでなんですか!その態度は」 「・・・お前も入りたいわけ?」 「なわけないですよ 返してください」 「王子が持ってんだから、これは王子の物なんだけど」 随分と生意気な事を言って、私の(決して王子の物ではない)かさをこっちに傾けてきた もう十分びしょ濡れだし、今更かさなんて差しても意味ないけど何でだか分からないけど王子が傾けたかさの中に入ってしまった これって世間一般あいあいがさって言うんじゃないですか!何でこんな自己中王子とあいあいがさしてるんだ私! どうか知り合いに会いませんようにと心の中で強く強く願った 「お前さ名前なんていうの?」 「え、 」 「ふぅんか 明日も此処来いよ」 「は?な 何でと続けようとしたら、前からでかい黒い車が走ってきてそれにびっくりして言葉を失ったら、なんかその車は私の横に止まって王子がじゃぁなと車に乗っていった ちょっと何この展開!しかも明日平日だから学校あってこの時間帯これないんだけど、車はもう見えない所まで走っていってて私はその場に取り残されて、空しくかさを差している ちょっとねぇ何がしたいの?ねぇねぇねぇ!王子さま 雨の日の愛情理論 流伽に捧げます!相互記念 |