こんにちは!わたし今日から並森中学に入学したぴかぴかの新一年生、 です!そして今丁度並森に来てます。なぜかというと今日は入学式だからです。ですが困ったことに、教室から体育館に向かっていたはずがいつのまにか見知らぬ場所をぐるぐる回っております。結論的に言えば、迷いました! もう式が始まっているのか、辺りには人影すら見えない。それがわたしの不安を更に上昇させ、誰か人はいないだろうかとせめてもの希望の職員室を探そうとうろうろするも、始めてきた場所で動くのはただ時間を浪費しているだけのようだ。(ああ本気でどうしよう・・・!)とりあえず現在地の確認に窓を覗くと、中庭らしきものが見え、そこにここの生徒らしき人影がぽつりと見えた。(かみさま!)窓を開けて、(見たところ男性のような)彼がこちらに気づいてくれるのを待つ。だが彼は何か下を向いたまま一向にこちらを見る気配がない。それに待ちきれなくなったわたしは思わず窓から叫ぼうと思い口を開いたが、もしも、もしも他の誰かに聞かれたらと思うと恥しいのでそれが言葉にされることはなかった。(気付け気付け気付け!)その背中に念をかけるもやはり無意味のようだ。彼に助けてもらうのは諦めて、窓を閉めた。だけどそのとき丁度彼が振り向いたのでもう一度窓を開け「あの!」すいません、と声をかけたが彼は当然のごとく、何も聞こえなかったかのように(もしかしたらほんとに聞こえなかったのかもと疑うレベルの無視です!!)どこかへ立ち去っていった。がっくり。(唯一の望みが・・・) それから少し歩いて、とりあえず体育館は諦めて一度外に出ようと考える。(さすがわたし!頭いい!)階段を下りれば自然と出口に向かえるだろう、という結論に至ったわたしは静かな校舎内をばたばたと走り抜けた。 「ちょっと、君」 「やった!出口・・!」 やっとこの迷路から開放されるわ!と思わず叫びそうになったわたしはここが学校だということを思い出して心の中だけに留める。途中何か黒いものがわたしの視界をうろちょろしたような気がするが、それを気にできるほど今のわたしは落ち着いてはいられなかった。(お母さんわたし助かったよ!)だけどそんな涙の出そうな感動は一瞬のうちに滅多打ちにされる。わたしの目の前を、先程視界に入った気がした黒いものがひらりと舞った。 「い・・・った!」 ば、ばかお前前見て歩けー!なんて思わず叫べば、わたしの前には(わたしが今遠慮なしにぶつかったであろう)男の人が立っている。先程から目の前をちらちらしてたのはどうやらこの人の学ランのようだ。(ていうかここブレザーじゃなかったっけ)(もしかして他校生?)ぶつかった拍子に打ったおでこを抑えながら色々な思考を巡らせていると、その人は「いい度胸だね」なんていいながら、どこからともなく真っ黒な棒(こ、これがあのトンファーとかいうやつか!)を取り出しわたしの目の前に突きつけた。 「え、あの、」 混乱で舌足らずな言葉を吐くと、その人は「救急車は呼んであげる」と穏やかに優しくない言葉を口にする。物騒な武器を突きつけられた現実に、目はもちろん耳も疑った。(お母さん、私ここで死ぬかもしれません いままで本当に) 「じゃあね、」 「ま、まってくださ、」 わたしの言葉など虚しく彼はトンファーを私に振りかざすと、嬉しそうに口元を吊り上げて笑った。 (不覚にも、その強気な笑顔がかっこいいと思った) |
恋に落ちた瞬間
070818