目を開けると、そこは見知らぬ部屋だった。客室みたいな、だけどそれにしてはやけに殺風景な場所。寝ていたソファーの上で上半身だけを起こすと、頭がずきりと痛んだ。(え、なにこれ たんこぶ・・・?)そこから何故こんなところにいるのかとこれまでの記憶を思い返せば、玄関での出来事が頭に浮かぶ。私を気絶に追い込んだあの人、学ランの彼は一体誰だったんだと考えるも、制服がブレザーでなかったことからしてここの生徒ではないのだろう。なぜこの学校に来ていたのかは知らないけど。つまりはもう会うこともないだろうという結論が出た。(名推理)
だけど何故自分はこんなところで寝さされていたのか。誰が運んでくれたんだろうと思うが、この部屋に人影らしきものはなかったので諦めざるを得ない。(あとで会ったらお礼を言おう・・!) 痛む頭を抑え、そっとソファと布団の間から抜け出した。とりあえずここから出なければ始まらないとドアノブを握るが、思いがけない事に わたしが押すことなくそれは開かれる。押そうとしたドアを、向こうから引かれたのだ。驚いて声をあげそうになったとき、目の前に現れた顔に息を呑んだ。

「ああ、起きたか」
「!!!(ひい!喋った!)」
「委員長が様子を見て来いというのだが」

ドアを引いた張本人の長いリーゼントをしたお兄さん(学ラン着てる)は、わたしを上から下まで見下ろし、「元気そうだな」と言った後ズボンのポケットから携帯を取り出し電話をかける。その電話はどうやら彼の言う委員長に繋がっているらしく、その会話でなんとなく今おかれている状況を理解した。(どうやらわたしは委員長さんに助けられたみたい!)お礼を言う相手がわかったところで、リーゼントの彼(草壁さんというらしい)にもう少しこの部屋で待機しているようにともう一度寝かされていたソファに座るよう進められる。「飲め」と言う声に顔を上げれば、草壁さんに良い香りのするコーヒーを差し出された。

「あの、えーと草壁さん?」
「何だ?」
「委員長さんってどんな人ですか?」

コーヒーを飲み終え、暇を持て余している間草壁さんに話の相手をしてもらう。(話してみると案外良い人だ)(でも第一印象で損をするタイプ) わたしの問いに、彼は「強くて何を考えているのかわからない方だ」と遠くを見るような目で答えた。(一体何があったのか)すると突然ドアが開いて、誰かが入ってくる気配で後ろを振り返る。今の草壁さんの話で勝手に"委員長"の想像を膨らませていたわたしは、その見知った顔に驚きの声をあげた。

「さ、さっきの!」

わたしが指を指せば、彼は「元気そうだね」と先程の草壁さんと同じような言葉を口にする。(誰のせいだと思ってんだ!!)思わず批判の声をあげようと立ち上がったが、教えた覚えの無い自分の名前が彼の口から飛び出すのを聞いてあいた口をぱくぱくさせるだけに終わった。(委員長の口から発せられた君金魚なのという言葉は聞かなかったことにする)

、入学生だったんだ」

それならそうと早く言いなよ、と 言葉のわりには興味なさそうに言う彼に、お前が言う隙も無くトンファーで頭殴ったんだろ!といいそうになったが後が怖いのでやめておく。その代わり少しの抵抗にガンを飛ばせば、まるで玩具を見るような目でわたしを見た。(やっぱやめとけばよかったかな!!)

「原形とどめないくらいずたずたにしてやろうと思ったんだけどね」
「・・・・」
「君といれば面白いことが起こる気がしたから、生かしておくことにしたよ」
特に理由はないけど。と委員長は続けた。(こんなのが風紀委員長だなんてこの学校はいったい・・・) さい先不安しかなかった。

わたしが上記の言葉たちを飲み込んで、「それはありがとうございます」と歯切れ悪く返せば、彼はまたあの(私をトンファーで殴る)時の笑みで「期待はずれだったら咬み殺す」 と、またわたしにソレを突きつけてきた。




(当分この顔が頭から離れそうに無い)(もちろん悪い意味で)

恋に落ちた瞬間


070818