えーーーー、再びこんにちは。花の中学1年生 です!昨日は委員長(仮)←まだ信じたくない に脅しをかけられつつもなんとか逃げ切ることができましたが、今日はまたあの応接室という名の地獄へ呼び出されました。そしてあの委員長と名乗るつわものはどうやら雲雀恭弥というらしく、そいつについて新しくできた友達に聞いてみようと試みたところ「あの人には間違っても近づいちゃだめ関わっちゃだめよ!」と肩を掴まれがくがくと前後に揺さぶられ危うく意識を手放しそうになったのでそっちのほうが怖かった。(あの子にはもう近づかないでおこう・・・!)とりあえず先程のことは頭を振って取り消し、気を取り直して応接室のドアノブを握り、それを回し手前に引けば、相変わらず殺風景な部屋にぽつりとある黒いソファにそれと同じく黒い髪の男性が腰を下ろしているのが目に映った。(勿論彼、雲雀恭弥だ)「あのー」と小さく声を漏らせば、彼は「待ってたよ」と立ち上がり私にソファへ座るよう勧める。

「それで何のようですか?」

率直に聞いたがまずかっただろうかと雲雀恭弥に目をやる。と、彼は先日草壁さんが入れてくれたのと同じほんのり甘い香りのするコーヒーをご丁寧にもわたしの前へ突き出した。何を企んでいるんだこの男、(もしや毒!?)(その手には乗ってやらねーぜ!)と受け取ったコーヒーから彼へと視線を泳がせば、「そんな警戒しなくても何も入ってないから」と同じように淹れてきたであろうコーヒーを平然と口にしている。そんなあくまで冷静な彼の行動にむかついて、わたしは一気にそれを飲み干してやった。(にがっ)

「あなた一体何者ですか?」

「面白い事言うね君」

私が放った言葉の返答葉すぐに返ってきた。彼は、ソファにもたれた姿勢のまま視線だけをわたしにやると、「僕は並森中の風紀委員長だよ」と当たり前のように口にする。そんな彼に「全部嘘だってお見通しですよ!」と張り合う様に言えば、「何が」って呆れたようにまたコーヒーを飲みだした。(このやろーあくまで白を切るつもりか!)それから数分が経ち、コーヒーを飲み終えた雲雀恭弥は「本題に入ろうか」とあっさり次の話題へ切り替え、この話はどうやら幕を閉じたようだ。

「君、デスクワークはできる?」
「頭は悪くないほうだと思います、けど」
「それじゃあ話は早いね、君にお願いするよ」
「えっと?何をですか」

間違っても年上だ。間違っても。そう自分に言い聞かせ口にした言葉を無理やり敬語に直す。運動は全くといっていいほどできないが、勉強には自信があった。これは小学生のころからずっと思っているが、きっとわたしの運動神経は全て頭脳の方へと回されてしまったのだろう。言い方を変えれば、これほどかというまでに全く運動ができないということだ。でも運動なんてできなくとも人生やっていけるし、むしろ運動より勉強ができなければ社会ではやっていけない。そう自分に言い聞かせここまでやってきたはいいが、今まで平凡とした生活を歴然と送ってきたわたしは中学一年生というこんなところでこんな難題を言い渡されるなんて思いもしなかった。

「君を風紀委員の書記に任命する」
「え、、え?」
「君さっきから え しか言ってないけどほんとに頭いいの?」
「・・・」

書記という言葉に反論しようとすれば、彼は表情一つ変えず「大丈夫、書記って言っても名前だけで内容は雑用と変わらないから」と余計心配にさせるようなことを口にした。どうやらその言葉を否定するすべを私は持っていないようで、それは雲雀恭弥の後ろを見え隠れする黒いものが物語っている。
諦めたようにため息をつくと、彼は満足気に、そして最初からわかっていたかのように微笑むのだ。





(この人に命令されたら断れる自信ない)

恋に落ちた瞬間


070818